2008年08月26日

商法平成14年第1問

株式会社A社は,株式会社B社の総株主の議決権の60パーセントを有する株主であるが,A社及びB社は,A社を存続会社,B社を消滅会社として合併することとなった。A社及びB社は,ここ10年間ほど1株当たりの純資産額も1株当たりの配当もほぼ同じであったが,合併契約書におけるB社株主に対するA社新株の割当てに関する事項(合併比率)は,B社株式3株に対してA社株式1株の割合となっている。なお,合併交付金はない。

B社の株主総会においては,総株主の議決権の70パーセントを有する株主が合併に賛成,総株主の議決権の30パーセントを有する株主が合併に反対であり,合併契約書は承認された。

B社の株主であるXは,合併比率が不当だと考えているが,株主総会における合併契約書の承認の前後を通じて,どのような手段を採ることができるか。

(出題趣旨)
本問は,親会社が子会社を吸収合併するに当たり,合併比率を不当と考える子会社の少数株主が,自己の権利の保護を図るために商法上利用し得る手段に関するものである。具体的には,少数株主に認められる合併比率の不当性等を知るための情報の収集方法,少数株主の株式買取請求権の内容,合併比率の不当性と合併無効の訴えにおける無効事由との関係,子会社の合併承認決議における親会社の議決権行使と株主総会決議取消事由との関係等に関する理解を問うている。

(骨子)
(1)合併を行うには株主総会において合併承認の特別決議が必要となる(783条・309条2項12号)。そこで,Aのみでは決議できないことから,他の株主を説得し否決することができれば合併を阻止できる。そこで,事前の情報収集が必要となる。合併契約の内容等の合併に関する情報を記載した書面の閲覧(782条),計算書類の閲覧(442条3項),会計帳簿及びその資料の閲覧(433条1項)が有効な手段となる。差止(360条)も考えられるところ,合併比率について当事者の契約に委ねているから,合併比率の不当性は差止理由にはならない。よって,この差止(360条)という手段は採ることはできない。

(2)承認決議後では,合併承認決議取消の訴えが考えられる。まず,上述のように合併比率の不当は違法とはならない。次に,831条1項3号の可能性を考える。A社に有利な合併比率ゆえに『特別の利害関係』を有するといえる。そして,A社とB社の株式の価値はほぼ同等であると客観的に評価されるにもかかわらず,合併交付金もなく,3対1という合併比率の合併契約が承認されたているので,『著しく不当な決議』といえる。よって,合併承認決議取消の訴え(831条1項3号)という手段を採りうる。また,合併無効の訴え(828条1項7号)が考えられる。まず無効原因については,会社法上,明文の規定は設けられていないところ,上述のように合併比率の不当は違法とはならないことから無効事由たり得ない。また,上述のような合併承認決議に取消事由がある場合でも,後述の株式買取請求権で反対は株主の保護がはかれるから無効事由たりえない。なお,決議取消しの訴えの判決前に,合併の効力が発生した場合には,合併無効の訴えにおいて総会決議の取消事由を審理すべきである(吸収説)。さらに,株式買取請求権を行使するという手段を採ることが可能である(785条)。

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パトラッシュ,疲れたろう。僕も疲れたんだ。
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posted by まったりな。 at 05:35 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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