2008年08月25日

『戦後日本経済史』

戦後日本経済史 (新潮選書)

比類なき高度成長を成し遂げ,石油ショックにも対処できた日本が,なぜバブル崩壊の痛手からは立ち直れないのか?

戦後から現在の日本の経済体制は,戦時期に確立された1940年体制(戦時経済体制)が連綿と続いている。そして,それが機能不全に陥っているというのが著者の主張で,それにもとづいて戦後の日本経済を検証している本です。

一般的に戦後の日本経済が語られる場合,GHQによる占領策により農地改革・財閥解体・各種の社会立法により荒れ地から日本は再生し,日本人の勤勉さなどの特性(正しいかは脇に置く)によって驚異的な発展を遂げたと語られれます。いままで上記の1940年制というのも聞いたことがなかったので,興味深く読みました。

この1940年制は付録1に簡単に財政金融政策・日本型企業・土地政策の3つの観点からまとめられています。これを最初に読む方が理解しやすいはずです。また,年表が巻末についていますが,日本の現代史についての雑学があれば面白く読めます。

第1章の「焦土からの復興」,第2章の「高度成長の基盤を作る」までは1940年体制が確立されている過程が述べられています。実はGHQは日本については全く理解が不十分で官僚機構にいいように手玉にとられたに過ぎないのではないかということですね。しかも,官僚機構において重きをなしていたのが社会主義ともいえる産業の国家統制を目指した岸信介・椎名悦三郎らに代表される革新官僚らが戦後の日本の再生を指導していったという。この部分では「何がなされなかったか」の方が重要であることが大変重要であることがよく分かります。あと,T時の最高権力者に対する面従腹背,U都合の悪い情報は一切出さない情報操作,V自分たちが必要であるとの最大限のアピールが官僚のお得意芸でこれはいまもずっと続いているんだと驚きました。

第3章から第5章までは,いかに1940年体制が効率的に機能していくかが歴史的事実を下に述べられます。このように成功したのは,労使協調路線と輸出競争力が高まったからということだろうと思います。この部分で印象に残ったのは,安保闘争についてです。これについては,「根拠なき熱狂」だったという。そして日本人は,その後も80年代のバブルと04年の郵政選挙で容易に煽動されたという部分です。04年の郵政選挙はずっとなんだこの異様な雰囲気は?と思っていたので,そうか衆愚政治に陥っていたのかと腑に落ちました。

第7章から第8章は記憶新しい話が多いと思います。それまで機能していた1940年体制が機能不全に陥り,しかもそれに協力していた経営しない経営者が増えて,どんどん道徳的に腐敗して犯罪行為を平然と行っていくさまが描かれていきます。特に国民に10兆円,国民ひとりあたり8万円がこれら犯罪行為のために使われたことに憤慨しました。

第9章は処方箋みたいなはずなんですが,ちょっと分かり難いかなと気がします。なんとなく漠然と過去から今を考えるのではなく,こんな視点もあるのかと面白く読める『戦後日本経済史』はお薦めです。

posted by まったりな。 at 05:31 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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