2009年10月01日

2007年参院選は憲法14条などに反しない。

【解説】一票の格差 現行制度の見直し迫る(イザ!)
2009年9月30日に,2007年(平成19年)7月29日に行われた参議院議員通常選挙について,選挙区間の1票の格差が最大4.86倍になっているとして,東京都選挙区の選挙人らが公職選挙法の議員定数配分規定が法の下の平等を定めた憲法14条1項等に違反し無効であるから,これに基づき施行された選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の上告審判決で,最高裁大法廷が定数配分規定を合憲と判断して上告人らの上告を棄却しました。15人の裁判官のうち竹崎裁判長ら10人の多数意見で中川了滋裁判官ら5人は違憲と反対意見を述べ,藤田宙靖裁判官ら4人の補足意見があります。

最大判平21・9・30(pdf)
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は,平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙当時,憲法14条1項に違反していたものということはできない。
(判決理由骨子)
平成19年7月29日に施行された参議院議員通常選挙当時の選挙区選出議員の定数配分規定は,憲法14条1項等に違反しない。しかし,投票価値の平等という観点からは,この定数配分規定の下でもなお大きな不平等が存する状態であり,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。

(多数意見)
憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかの決定を国会の裁量にゆだねているのであるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない。

参議院議員の選挙制度の仕組みは,憲法が二院制を採用し参議院の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとしたこと,都道府県が歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有し一つの政治的まとまりを有する単位としてとらえ得ること,憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていること等に照らし,相応の合理性を有するものであり,国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえない。そして,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき,それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題は,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その決定は,基本的に国会の裁量にゆだねられているものである。しかしながら,人口の変動の結果,投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。

以上は,最高裁昭和58年4月27日大法廷判決(以下「昭和58年大法廷判決」という。)以降の参議院(地方選出ないし選挙区選出)議員選挙に関する累次の大法廷判決の趣旨とするところでもあって,基本的な判断枠組みとしてこれを変更する必要は認められない。そして,当裁判所は,昭和58年大法廷判決以降,参議院議員通常選挙の都度,上記の判断枠組みに従い参議院議員定数配分規定の合憲性について判断してきたが,平成4年7月26日施行の参議院議員通常選挙当時の最大較差1対6.59について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていた旨判示したものの,いずれの場合についても,結論において,各選挙当時,参議院議員定数配分規定は憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示してきたところである。しかし,人口の都市部への集中が続き,最大較差1対5前後が常態化する中で,平成16年大法廷判決(百選[5]166)及び最高裁平成18年10月4日大法廷判決(平18年重判憲1)においては,上記の判断枠組み自体は基本的に維持しつつも,投票価値の平等をより重視すべきであるとの指摘や,較差是正のため国会における不断の努力が求められる旨の指摘がされ,また,不平等を是正するための措置が適切に行われているかどうかといった点をも考慮して判断がされるようになるなど,実質的にはより厳格な評価がされてきているところである。

上記の見地に立って,本件選挙当時の本件定数配分規定の合憲性について検討する。
参議院では,平成16年大法廷判決中の指摘を受け,当面の是正措置を講ずる必要があるとともに,その後も定数較差の継続的な検証調査を進めていく必要があると認識された。本件改正は,こうした認識の下に行われたものであり,その結果,平成17年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84に縮小することとなった。また,本件選挙は,本件改正の約1年2か月後に本件定数配分規定の下で施行された初めての参議院議員通常選挙であり,本件選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対4.86であったところ,この較差は,本件改正前の参議院議員定数配分規定の下で施行された前回選挙当時の上記最大較差1対5.13に比べて縮小したものとなっていた。本件選挙の後には,参議院改革協議会が設置され,同協議会の下に選挙制度に係る専門委員会が設置されるなど,定数較差の問題について今後も検討が行われることとされている。そして,現行の選挙制度の仕組みを大きく変更するには,後に述べるように相応の時間を要することは否定できないところであって,本件選挙までにそのような見直しを行うことは極めて困難であったといわざるを得ない。

以上のような事情を考慮すれば,本件選挙までの間に本件定数配分規定を更に改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものということはできず,本件選挙当時において,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない。

しかしながら,本件改正の結果によっても残ることとなった上記のような較差は,投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。ただ,の専門委員会の報告書に表れた意見にもあるとおり,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは,最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり,これを行おうとすれば,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。

以上の次第であるから,本件定数配分規定が本件選挙当時憲法に違反するに至っていたということはできない。

posted by まったりな。 at 05:03 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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