2010年03月16日

退職慰労年金の打ち切りには同意が必要


もみじ銀行(当時広島総合銀行)が退職慰労年金の支給を一方的に打ち切ったのは違法だとして,元役員の1人が未払い分の支払いなどを求めた訴訟ので最高裁は「元役員の同意なく,支払いを打ち切ることはできない」として,控訴審判決を破棄,審理を東京高裁に差し戻した。第一審の東京地裁は,元役員を対象とした年金について,「職務執行に対する対価の性質があり,元役員が同意しない限り,受給する権利はなくならない」としてた。しかし,控訴審は「制度の変更は画一的に行うことができ,効力は同意のない者にも及ぶ」と判断して打ち切りを有効とした判断していた。

判決要旨
株主総会の決議を経て内規に従い支給されることとなった取締役の報酬等に当たる退職慰労年金につき,集団的,画一的な処理が制度上要請されることを理由として,内規の廃止により退職慰労年金債権を失わせることの可否(消極)

最判平22・03・16(原文PDF
被上告人の株主総会において,被上告人の定める一定の基準による相当額の範囲内で上告人に退職慰労金を贈呈することとし,その具体的金額,贈呈の時期,方法等については取締役会に一任する旨の決議がされ,その後,被上告人の取締役会において,上告人に対する退職慰労金の額等の決定を代表取締役に一任する旨の決議がされ,次いで,被上告人の代表取締役が,本件内規に従って具体的な退職慰労金の額等を決定したことにより,被上告人と上告人との間に退職慰労年金支給についての契約が成立したことになる。契約が成立した以上,上告人の同意のない限り,被上告人が一方的に契約内容を変更することはできないのが原則である。
 被上告人の取締役に対する退職慰労年金は,取締役の職務執行の対価として支給される趣旨を含むものと解されるから,会社法361条1項にいう報酬等に当たる。本件内規に従って決定された退職慰労年金が支給される場合であっても,取締役が退任により当然に本件内規に基づき退職慰労年金債権を取得することはなく,被上告人の株主総会決議による個別の判断を経て初めて,被上告人と退任取締役との間で退職慰労年金の支給についての契約が成立し,当該退任取締役が具体的な退職慰労年金債権を取得するに至るものである。被上告人が,内規により退任役員に対して支給すべき退職慰労金の算定基準等を定めているからといって,異なる時期に退任する取締役相互間についてまで画一的に退職慰労年金の支給の可否,金額等を決定することが予定されているものではなく,退職慰労年金の支給につき,退任取締役相互間の公平を図るために,いったん成立した契約の効力を否定してまで集団的,画一的な処理を図ることが制度上要請されているとみることはできない。退任取締役が被上告人の株主総会決議による個別の判断を経て具体的な退職慰労年金債権を取得したものである以上,その支給期間が長期にわたり,その間に社会経済情勢等が変化し得ることや,その後の本件内規の改廃により将来退任する取締役との間に不公平が生ずるおそれがあることなどを勘案しても,退職慰労年金については,上記のような集団的,画一的処理が制度上要請されているという理由のみから,本件内規の廃止の効力を既に退任した取締役に及ぼすことは許されず,その同意なく上記退職慰労年金債権を失わせることはできないと解するのが相当である。

タグ:会社法 判例
posted by まったりな。 at 21:09 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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