●最高裁「違憲状態」判断、見直しに強いメッセージ
一票の格差が最大2.30倍だった平成21年の衆院選は違憲として,2つの弁護士グループが選挙無効を求めた計9件の訴訟の上告審判決で,最高裁大法廷は23日に,「憲法の要求する投票価値の平等に反する状態に至っていた」とし,選挙は違憲状態だったと判断した。9件の訴訟は,高裁段階で違憲判断が4件で,違憲状態との判断が3件,合憲が2件と判断が割れていた。
これまで最高裁は格差3倍未満の場合は「合憲」とする判断を繰り返してきたが,今回の判決は制度そのものが生む違憲性に言及して,数字だけでみれば合憲ラインの最大2.300倍だった選挙を違憲状態とし,「3倍ルール」とも呼ばれた合憲基準は失われたといえる。最高裁が衆院選について違憲状態との判断を示すのは,平成5年の大法廷判決以来で,現行の小選挙区比例代表並立制では初めてとなる。
判決は「1人別枠方式」がとられた経緯について,「現行の選挙制度導入の際,人口の少ない県の定数が大幅削減されることに配慮しなければならなかった」と,激変緩和の意味合いがあったと指摘し,その上で「最初の選挙から10年以上が経過し,もはや合理性は失われた」とした。また,付言で「合理的な期間内にできるだけ速やかに1人別枠方式を廃止し,区割り規定を改正するなどの立法的措置を講じる必要がある」とした。
2011年03月24日
2010年07月09日
非嫡出子の相続格差について大法廷へ回付
●非嫡出子の相続格差、大法廷で審理へ 民法規定の「合憲」見直しも
結婚していない男女の間に生まれた「非嫡出子」の遺産相続分を嫡出子の半分とした民法の規定は,憲法に違反するかが争点について最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は審理を大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に回付しました。規定を合憲とした最高裁判例が見直される可能性もあります。今回の裁判で争われた事件は,2002年に亡くなった和歌山市の女性らの遺産相続で,女性の嫡出子である娘が全体の3分の2を,非嫡出子の息子が3分の1を相続したのに対し,息子側は平等な分配を求めたが第一・二審で退けられ,特別抗告していた。
結婚していない男女の間に生まれた「非嫡出子」の遺産相続分を嫡出子の半分とした民法の規定は,憲法に違反するかが争点について最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は審理を大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に回付しました。規定を合憲とした最高裁判例が見直される可能性もあります。今回の裁判で争われた事件は,2002年に亡くなった和歌山市の女性らの遺産相続で,女性の嫡出子である娘が全体の3分の2を,非嫡出子の息子が3分の1を相続したのに対し,息子側は平等な分配を求めたが第一・二審で退けられ,特別抗告していた。
2010年04月03日
3月30日の判例
最判平22・03・30の判決要旨
道路事業の用地として所有地を買い取られたことに伴い,同土地上に存する所有建物を移転することに対する補償金の支払を受けた個人が,当該建物を他に譲渡して上記土地外に曳行移転させた場合において,上記建物が取り壊されずに現存していることなどから直ちに,上記補償金には租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの)33条1項及び所得税法44条のいずれの適用もなく,その全額を一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
上記の(原文PDF)
土地が土地収用法等の規定に基づいて収用され又は収用権を背景として買い取られることとなったことに伴い,その土地の上にある個人所有の建物について移転,移築,取壊し,除去等をしなければならなくなった場合において,その所有者がその費用に充てるための補償金の交付を受けたときは,当該補償金の金額は,本来その者の一時所得の収入金額と見るべきものである。
しかし,その者が上記の金額を交付の目的に従って上記の移転等の費用に充てたときは,所得税法44条の規定により,その費用に充てた金額は,各種所得の金額の計算上必要経費に算入され又は譲渡に要した費用とされる部分の金額に相当する金額を除き,一時所得の金額の計算上総収入金額に算入されないことになる。
また,上記の補償金のうち,当該建物の取壊し又は除去による損失に対する補償金については,措置法33条3項2号の規定により,当該建物について同条1項所定の収用等による譲渡があったものとみなし,その金額を当該譲渡に係る譲渡所得の収入金額である同項所定の補償金等の額とみなした上で,同項を適用し,その金額がその者の取得した代替資産の取得価額以下である場合には上記の譲渡がなかったものとし,その金額が当該取得価額を超える場合には上記建物のうちその超える金額に相当する部分について譲渡があったものとして,その年分の譲渡所得の金額の計算をすることを選択することも許されるものである。ただし,同条5項は,同条1項1号等に規定する補償金の額は,名義がいずれであるかを問わず,資産の収用等の対価たる金額をいうものとし,収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとすると定めており,同項の補償金等の額とみなされる同条3項2号所定の「資産の損失に対する補償金」の額も,これと同様に,土地の収用等に伴い取壊し又は除去により失った資産の対価に相当する金額をいうものと解するのが相当であるから,土地の収用等に伴いその土地の上にある建物の移転等に要する費用の補償を受けた者が,当該建物を取り壊して代替資産を取得した場合,当該補償を受けた金額のうち同号所定の補償金に当たるのは,当該建物の対価に相当する部分に限られるものというべきである。
ところで,「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年6月29日閣議決定)24条1項及び「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(同年10月12日用地対策連絡会決定)28条1項は,取得し又は使用する土地等に取得せず又は使用しない建物等があるときは,当該建物等を通常妥当と認められる移転先に,通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償する旨を定め,これを受けた「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」(同38年月7日用地対策連絡会決定。以下「本件細則」という。)第15は,@建物を移転させるときは,通常妥当と認められる移転先を残地又は残地以外の土地のいずれとするかについて認定を行った上で,当該認定に係る移転先に建物を移転するのに通常妥当と認められる移転工法の認定を行い,当該移転先に当該移転工法により移転するのに要する費用を補償するものとし,A通常妥当と認められる移転工法は,再築工法,曳家工法,改造工法,復元工法及び除却工法とし,B再築工法(残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築し,又は残地に従前の建物と同種同等の建物若しくは従前の建物に照応する建物を建築する工法)を妥当と認定した場合の建物の移転料は,建物の現在価額,運用益損失額(従前の建物の推定再建築費と従前の建物の現在価額との差額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する額)及び取壊し工事費の合計額から発生材価額を差し引いて算定した額とする旨を定めている。
そうすると,再築工法による移転を前提に本件細則の定めに準ずる方法で算定された建物の移転料の交付を受けた者が,その交付の目的に従って,従前の建物を取り壊し,代替建物を建築して取得した場合には,当該移転料のうち,@従前の建物の現在価額から発生材価額を差し引いた金額に相当する部分は,その全額について,A運用益損失額に相当する部分は,代替建物の建築に実際に要した費用の額が従前の建物の現在価額を超える場合において,その超える金額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する部分について,B取壊し工事費に相当する部分は,実際に従前の建物の取壊し工事の費用に充てられた部分について,それぞれその交付の目的に従って移転等の費用に充てられたものとして,所得税法44条の適用を受けると解するのが相当である。また,これらのうち上記@の部分については,更に,従前の建物の対価に相当するものとして,措置法33条3項2号所定の補償金に該当し,同条1項の適用を受けると解するのが相当である。
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道路事業の用地として所有地を買い取られたことに伴い,同土地上に存する所有建物を移転することに対する補償金の支払を受けた個人が,当該建物を他に譲渡して上記土地外に曳行移転させた場合において,上記建物が取り壊されずに現存していることなどから直ちに,上記補償金には租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの)33条1項及び所得税法44条のいずれの適用もなく,その全額を一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
上記の(原文PDF)
土地が土地収用法等の規定に基づいて収用され又は収用権を背景として買い取られることとなったことに伴い,その土地の上にある個人所有の建物について移転,移築,取壊し,除去等をしなければならなくなった場合において,その所有者がその費用に充てるための補償金の交付を受けたときは,当該補償金の金額は,本来その者の一時所得の収入金額と見るべきものである。
しかし,その者が上記の金額を交付の目的に従って上記の移転等の費用に充てたときは,所得税法44条の規定により,その費用に充てた金額は,各種所得の金額の計算上必要経費に算入され又は譲渡に要した費用とされる部分の金額に相当する金額を除き,一時所得の金額の計算上総収入金額に算入されないことになる。
また,上記の補償金のうち,当該建物の取壊し又は除去による損失に対する補償金については,措置法33条3項2号の規定により,当該建物について同条1項所定の収用等による譲渡があったものとみなし,その金額を当該譲渡に係る譲渡所得の収入金額である同項所定の補償金等の額とみなした上で,同項を適用し,その金額がその者の取得した代替資産の取得価額以下である場合には上記の譲渡がなかったものとし,その金額が当該取得価額を超える場合には上記建物のうちその超える金額に相当する部分について譲渡があったものとして,その年分の譲渡所得の金額の計算をすることを選択することも許されるものである。ただし,同条5項は,同条1項1号等に規定する補償金の額は,名義がいずれであるかを問わず,資産の収用等の対価たる金額をいうものとし,収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとすると定めており,同項の補償金等の額とみなされる同条3項2号所定の「資産の損失に対する補償金」の額も,これと同様に,土地の収用等に伴い取壊し又は除去により失った資産の対価に相当する金額をいうものと解するのが相当であるから,土地の収用等に伴いその土地の上にある建物の移転等に要する費用の補償を受けた者が,当該建物を取り壊して代替資産を取得した場合,当該補償を受けた金額のうち同号所定の補償金に当たるのは,当該建物の対価に相当する部分に限られるものというべきである。
ところで,「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年6月29日閣議決定)24条1項及び「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(同年10月12日用地対策連絡会決定)28条1項は,取得し又は使用する土地等に取得せず又は使用しない建物等があるときは,当該建物等を通常妥当と認められる移転先に,通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償する旨を定め,これを受けた「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」(同38年月7日用地対策連絡会決定。以下「本件細則」という。)第15は,@建物を移転させるときは,通常妥当と認められる移転先を残地又は残地以外の土地のいずれとするかについて認定を行った上で,当該認定に係る移転先に建物を移転するのに通常妥当と認められる移転工法の認定を行い,当該移転先に当該移転工法により移転するのに要する費用を補償するものとし,A通常妥当と認められる移転工法は,再築工法,曳家工法,改造工法,復元工法及び除却工法とし,B再築工法(残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築し,又は残地に従前の建物と同種同等の建物若しくは従前の建物に照応する建物を建築する工法)を妥当と認定した場合の建物の移転料は,建物の現在価額,運用益損失額(従前の建物の推定再建築費と従前の建物の現在価額との差額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する額)及び取壊し工事費の合計額から発生材価額を差し引いて算定した額とする旨を定めている。
そうすると,再築工法による移転を前提に本件細則の定めに準ずる方法で算定された建物の移転料の交付を受けた者が,その交付の目的に従って,従前の建物を取り壊し,代替建物を建築して取得した場合には,当該移転料のうち,@従前の建物の現在価額から発生材価額を差し引いた金額に相当する部分は,その全額について,A運用益損失額に相当する部分は,代替建物の建築に実際に要した費用の額が従前の建物の現在価額を超える場合において,その超える金額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する部分について,B取壊し工事費に相当する部分は,実際に従前の建物の取壊し工事の費用に充てられた部分について,それぞれその交付の目的に従って移転等の費用に充てられたものとして,所得税法44条の適用を受けると解するのが相当である。また,これらのうち上記@の部分については,更に,従前の建物の対価に相当するものとして,措置法33条3項2号所定の補償金に該当し,同条1項の適用を受けると解するのが相当である。
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2010年03月27日
住民訴訟とか不法行為とか
最近の判例です。住民訴訟も結構多いですね。政治不信で地方政治を見る住民の目も厳しくなっているようです。
最判平成平22・03・25(原文PDF)
判決要旨
市と第三者との間で,市が当該第三者から約2年6か月前に別の債権の弁済として受領した金員を,地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において行使すべきことが求められている市の当該第三者に対する不当利得返還請求権に充当する旨の合意がされた場合において,同請求権が上記合意により消滅したとされた事例
最判平成平22・03・25(原文PDF)
判決要旨
勤務先を退職した従業員が,当該勤務先と同種の事業を営み,その取引先から継続的に仕事を受注した行為が,不法行為法上違法とはいえないとされた事例
最判平成平22・03・25(原文PDF)
判決要旨
市と第三者との間で,市が当該第三者から約2年6か月前に別の債権の弁済として受領した金員を,地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において行使すべきことが求められている市の当該第三者に対する不当利得返還請求権に充当する旨の合意がされた場合において,同請求権が上記合意により消滅したとされた事例
最判平成平22・03・25(原文PDF)
判決要旨
勤務先を退職した従業員が,当該勤務先と同種の事業を営み,その取引先から継続的に仕事を受注した行為が,不法行為法上違法とはいえないとされた事例
2010年03月25日
任期満了間際に政務調査費でPCなど購入することへの判断
●[政調費]任期満了前の支出、必要性なければ違法 最高裁
茨城県かすみがうら市が2006年当時の市議14人はに支出した政務調査費約150万円をパソコンやビデオカメラなどを購入し,2007年1月の市議選には出馬しなかったため,かすみがうら市民が「違法な支出だった」として提訴した住民訴訟について,「調査や研究に必要だったのかどうか,十分に審理されていない」とし,支出を適法とした控訴審判決を破棄し審理を東京高裁に差し戻した。控訴審判決は「政務調査費の支出は各議員の裁量権が尊重される。任期満了に近い時期であっても,裁量権の逸脱があったとはいえない」として請求を棄却しました。
判決要旨
交付を受けた政務調査費からの支出が使途基準に合致しないものであったことをうかがわせる上告人(原告)主張の事実の存否等を審理することなく,同支出により購入された物品の品名を認定するなどしただけで,直ちに同支出が同使途基準に反するものとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例
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茨城県かすみがうら市が2006年当時の市議14人はに支出した政務調査費約150万円をパソコンやビデオカメラなどを購入し,2007年1月の市議選には出馬しなかったため,かすみがうら市民が「違法な支出だった」として提訴した住民訴訟について,「調査や研究に必要だったのかどうか,十分に審理されていない」とし,支出を適法とした控訴審判決を破棄し審理を東京高裁に差し戻した。控訴審判決は「政務調査費の支出は各議員の裁量権が尊重される。任期満了に近い時期であっても,裁量権の逸脱があったとはいえない」として請求を棄却しました。
判決要旨
交付を受けた政務調査費からの支出が使途基準に合致しないものであったことをうかがわせる上告人(原告)主張の事実の存否等を審理することなく,同支出により購入された物品の品名を認定するなどしただけで,直ちに同支出が同使途基準に反するものとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例
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2010年03月23日
街頭募金詐欺で被害未特定でも詐欺罪が成立
●街頭募金詐欺で実刑確定へ 最高裁初判断
2004 年10〜12月に大阪などで,募集したアルバイトに「難病の子どもたちを救うために募金に協力をお願いします」と連呼させ,通行人から総額約2,480万円を詐取したとして、大阪府警が全国で初めて募金詐欺を立件した事件が確定しました。街頭で募金をしていると言うだけで全部インチだと思って差し支えない思います。それで,個々の被害者や被害金額の特定が難しい虚偽の街頭募金に詐欺罪が成立するかどうかが争われた刑事裁判で,「特定できなくても詐欺罪は成立する」との初判断を最高裁が示しました。そのうえで同罪などに問われた大阪市阿倍野区の自称NPO法人代表の上告人の上告を棄却し,懲役5年・罰金200万円とした控訴審判決が確定します。
決定要旨
1 街頭募金の名の下に通行人から現金をだまし取ろうと企てた者が,約2か月間にわたり,事情を知らない多数の募金活動員を関西一円の通行人の多い場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ,これに応じた通行人から現金をだまし取ったという街頭募金詐欺について,その特徴(判文参照)にかんがみると,一体のものと評価し包括一罪と解することができるとされた事例
2 包括一罪と解される上記のような街頭募金詐欺の罪となるべき事実について,募金に応じた多数人を被害者とした上,被告人の行った募金の方法,その方法により募金を行った期間,場所及びこれにより得た総金額を摘示することをもってその特定に欠けるところはないとされた事例
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2004 年10〜12月に大阪などで,募集したアルバイトに「難病の子どもたちを救うために募金に協力をお願いします」と連呼させ,通行人から総額約2,480万円を詐取したとして、大阪府警が全国で初めて募金詐欺を立件した事件が確定しました。街頭で募金をしていると言うだけで全部インチだと思って差し支えない思います。それで,個々の被害者や被害金額の特定が難しい虚偽の街頭募金に詐欺罪が成立するかどうかが争われた刑事裁判で,「特定できなくても詐欺罪は成立する」との初判断を最高裁が示しました。そのうえで同罪などに問われた大阪市阿倍野区の自称NPO法人代表の上告人の上告を棄却し,懲役5年・罰金200万円とした控訴審判決が確定します。
決定要旨
1 街頭募金の名の下に通行人から現金をだまし取ろうと企てた者が,約2か月間にわたり,事情を知らない多数の募金活動員を関西一円の通行人の多い場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ,これに応じた通行人から現金をだまし取ったという街頭募金詐欺について,その特徴(判文参照)にかんがみると,一体のものと評価し包括一罪と解することができるとされた事例
2 包括一罪と解される上記のような街頭募金詐欺の罪となるべき事実について,募金に応じた多数人を被害者とした上,被告人の行った募金の方法,その方法により募金を行った期間,場所及びこれにより得た総金額を摘示することをもってその特定に欠けるところはないとされた事例
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2010年03月22日
要素の錯誤についての判例
判決要旨
学校法人の理事がした辞任の意思表示及び同法人の理事会において後任理事の選任決議案に賛成する旨の議決権の行使が要素の錯誤により無効であるとはいえないとされた事例
最判平22・03・18(原文PDF)
金融機関と交渉して当該金融機関に対する連帯保証人の保証債務を免れさせるという債務を履行する力量についての誤信は,ただ単に,債務者にその債務を履行する能力があると信頼したにもかかわらず,実際にはその能力がなく,その債務を履行することができなかったというだけでは,民法95条にいう要素の錯誤とするに足りず,債務者自身の資力,他からの資金調達の見込み等,債務の履行可能性を左右すべき重要な具体的事実に関する認識に誤りがあり,それが表示されていた場合に初めて,要素の錯誤となり得るというべきである。…被上告人らが上告人Yに本件合意を履行する能力があると信じた事情として,上告人Yから前記の大物3名の上告人Yの理事への就任が予定され,将来的にはC大学がA学園を経営することになるという説明がされたことがあるが,これらは,本件議決権行使等の当時においては現実に存在した事柄であったということができ,その後同理事らが辞任するなどし,C大学側との協議が成立するに至らなかったとしても,本件議決権行使等の当時においてこれらの点につき錯誤があったことになるものではない。そのほかに,上告人Yの資力,資金調達の見込み等,債務の履行可能性を左右すべき重要な具体的事実に関して,被上告人らに錯誤があったことをうかがわせる事情は存しないから,上告人Yが本件債務を履行する力量を備えているものと信頼していたとしても,その信頼が表示されていたか否かにかかわらず,要素の錯誤があったものとはいえない。
そうすると,旧理事らによる本件議決権行使等が要素の錯誤により無効であるということはできない。
学校法人の理事がした辞任の意思表示及び同法人の理事会において後任理事の選任決議案に賛成する旨の議決権の行使が要素の錯誤により無効であるとはいえないとされた事例
最判平22・03・18(原文PDF)
金融機関と交渉して当該金融機関に対する連帯保証人の保証債務を免れさせるという債務を履行する力量についての誤信は,ただ単に,債務者にその債務を履行する能力があると信頼したにもかかわらず,実際にはその能力がなく,その債務を履行することができなかったというだけでは,民法95条にいう要素の錯誤とするに足りず,債務者自身の資力,他からの資金調達の見込み等,債務の履行可能性を左右すべき重要な具体的事実に関する認識に誤りがあり,それが表示されていた場合に初めて,要素の錯誤となり得るというべきである。…被上告人らが上告人Yに本件合意を履行する能力があると信じた事情として,上告人Yから前記の大物3名の上告人Yの理事への就任が予定され,将来的にはC大学がA学園を経営することになるという説明がされたことがあるが,これらは,本件議決権行使等の当時においては現実に存在した事柄であったということができ,その後同理事らが辞任するなどし,C大学側との協議が成立するに至らなかったとしても,本件議決権行使等の当時においてこれらの点につき錯誤があったことになるものではない。そのほかに,上告人Yの資力,資金調達の見込み等,債務の履行可能性を左右すべき重要な具体的事実に関して,被上告人らに錯誤があったことをうかがわせる事情は存しないから,上告人Yが本件債務を履行する力量を備えているものと信頼していたとしても,その信頼が表示されていたか否かにかかわらず,要素の錯誤があったものとはいえない。
そうすると,旧理事らによる本件議決権行使等が要素の錯誤により無効であるということはできない。
2010年03月17日
ネット書き込みでの名誉毀損めぐる最高裁決定では個人は表現活動できなくなる。
グロービートジャパンが運営するラーメン花月・平和神軍事件の最高裁決定が出ました。被告人側の上告を棄却する決定をし,第1審東京地裁の無罪判決を破棄して罰金30万円の逆転有罪とした控訴審の東京高裁判決が確定しました。まぁマスゴミの既得権を守るためならなんでもありということですね。間違った紛争であるイラク戦争への「自衛隊派遣反対」のビラ配布で市民の有罪が確定しているし北朝鮮以上の言論統制機関だなぁ最高裁判所って。
決定要旨
1 インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の表現手段を利用した場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない。
2 インターネットの個人利用者による表現行為について,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて相当の理由があるとはいえないとして,名誉毀損罪の成立が認められた事例
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固有必要的共同訴訟の不利益変更について
本件は,被上告人が,上告人らに対し,上告人Y が民法891条5号所定の相続欠格者に当たるとして,同YがAの相続財産につき相続人の地位を有しないことの確認等を求める事案である(以下,上記確認請求を「本件請求」という。)。
判決要旨
甲の乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるのに,乙に対する請求を認容し,丙に対する請求を棄却する趣旨の判決がされた場合,上訴審は,甲が不服申立てをしていなくても,合一確定に必要な限度で,上記判決を丙に不利益に変更することができる。
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判決要旨
甲の乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるのに,乙に対する請求を認容し,丙に対する請求を棄却する趣旨の判決がされた場合,上訴審は,甲が不服申立てをしていなくても,合一確定に必要な限度で,上記判決を丙に不利益に変更することができる。
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2010年03月16日
退職慰労年金の打ち切りには同意が必要
もみじ銀行(当時広島総合銀行)が退職慰労年金の支給を一方的に打ち切ったのは違法だとして,元役員の1人が未払い分の支払いなどを求めた訴訟ので最高裁は「元役員の同意なく,支払いを打ち切ることはできない」として,控訴審判決を破棄,審理を東京高裁に差し戻した。第一審の東京地裁は,元役員を対象とした年金について,「職務執行に対する対価の性質があり,元役員が同意しない限り,受給する権利はなくならない」としてた。しかし,控訴審は「制度の変更は画一的に行うことができ,効力は同意のない者にも及ぶ」と判断して打ち切りを有効とした判断していた。
判決要旨
株主総会の決議を経て内規に従い支給されることとなった取締役の報酬等に当たる退職慰労年金につき,集団的,画一的な処理が制度上要請されることを理由として,内規の廃止により退職慰労年金債権を失わせることの可否(消極)
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2010年03月12日
キツネ侵入による事故死の国賠請求
●キツネ侵入による事故死、高速会社に「責任なし」 最高裁:イザ!
北海道苫小牧市の高速道路でキツネを避けようとしたことが原因で事故死した女性の両親が,東日本高速道路(旧日本道路公団)に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で,東日本高速道路に賠償を命じた2審判決を破棄し,両親側の逆転敗訴が確定した。
最判平22・3・2(原文PDF)
国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,当該営造物の使用に関連して事故が発生し,被害が生じた場合において,当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは,その事故当時における当該営造物の構造,用法,場所的環境,利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである(最判昭45・8・20,最判昭53・7・4)。
本件道路には有刺鉄線の柵と金網の柵が設置されているものの,有刺鉄線の柵には鉄線相互間に20cmの間隔があり,金網の柵と地面との間には約10cmの透き間があったため,このような柵を通り抜けることができるキツネ等の小動物が本件道路に侵入することを防止することはできなかったものということができる。しかし,キツネ等の小動物が本件道路に侵入したとしても,走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく,通常は,自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきである。このことは,本件事故以前に,本件区間においては,道路に侵入したキツネが走行中の自動車に接触して死ぬ事故が年間数十件も発生していながら,その事故に起因して自動車の運転者等が死傷するような事故が発生していたことはうかがわれず,北海道縦貫自動車道函館名寄線の全体を通じても,道路に侵入したキツネとの衝突を避けようとしたことに起因する死亡事故は平成6年に1件あったにとどまることからも明らかである。
これに対し,本件資料に示されていたような対策が全国や北海道内の高速道路において広く採られていたという事情はうかがわれないし,そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり,加えて,前記事実関係によれば,本件道路には,動物注意の標識が設置されていたというのであって,自動車の運転者に対しては,道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができる。
これらの事情を総合すると,上記のような対策が講じられていなかったからといって,本件道路が通常有すべき安全性を欠いていたということはできず,本件道路に設置又は管理の瑕疵があったとみることはできない。
北海道苫小牧市の高速道路でキツネを避けようとしたことが原因で事故死した女性の両親が,東日本高速道路(旧日本道路公団)に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で,東日本高速道路に賠償を命じた2審判決を破棄し,両親側の逆転敗訴が確定した。
最判平22・3・2(原文PDF)
国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,当該営造物の使用に関連して事故が発生し,被害が生じた場合において,当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは,その事故当時における当該営造物の構造,用法,場所的環境,利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである(最判昭45・8・20,最判昭53・7・4)。
本件道路には有刺鉄線の柵と金網の柵が設置されているものの,有刺鉄線の柵には鉄線相互間に20cmの間隔があり,金網の柵と地面との間には約10cmの透き間があったため,このような柵を通り抜けることができるキツネ等の小動物が本件道路に侵入することを防止することはできなかったものということができる。しかし,キツネ等の小動物が本件道路に侵入したとしても,走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく,通常は,自動車の運転者が適切な運転操作を行うことにより死傷事故を回避することを期待することができるものというべきである。このことは,本件事故以前に,本件区間においては,道路に侵入したキツネが走行中の自動車に接触して死ぬ事故が年間数十件も発生していながら,その事故に起因して自動車の運転者等が死傷するような事故が発生していたことはうかがわれず,北海道縦貫自動車道函館名寄線の全体を通じても,道路に侵入したキツネとの衝突を避けようとしたことに起因する死亡事故は平成6年に1件あったにとどまることからも明らかである。
これに対し,本件資料に示されていたような対策が全国や北海道内の高速道路において広く採られていたという事情はうかがわれないし,そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであり,加えて,前記事実関係によれば,本件道路には,動物注意の標識が設置されていたというのであって,自動車の運転者に対しては,道路に侵入した動物についての適切な注意喚起がされていたということができる。
これらの事情を総合すると,上記のような対策が講じられていなかったからといって,本件道路が通常有すべき安全性を欠いていたということはできず,本件道路に設置又は管理の瑕疵があったとみることはできない。
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2010年03月10日
基礎控除の必要費の算定
●キャバ嬢の基礎控除、出勤してない日も… 最高裁が審理を差し戻し:イザ!
キャバクラやクラブのホステスの源泉徴収税額算出をめぐり,報酬から差し引く必要経費を考慮した基礎控除額は,実際に出勤した日数分か,出勤日以外も含めた報酬計算期間の全日数分かが争われた訴訟で最高裁は全日数分を控除できるとの初判断を示し,「実際の出勤日数分しか控除できない」と主張した国税当局勝訴の原審判決を破棄し,審理を東京高裁に差し戻した。
最判平22・3・2(原文PDF)
一般に,「期間」とは,ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった,時的連続性を持った概念であると解されているから,所得税法施行令322条(以下,施行令と略す。)にいう「当該支払金額の計算期間」も,当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然であり,これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない。
…租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく,原審のような解釈を採ることは,上記のとおり,文言上困難であるのみならず,ホステス報酬に係る源泉徴収制度において基礎控除方式が採られた趣旨は,できる限り源泉所得税額に係る還付の手数を省くことにあったことが,立法担当者の説明等からうかがわれるところであり,この点からみても,原審のような解釈は採用し難い。
そうすると,ホステス報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合においては,施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は,ホステスの実際の稼働日数ではなく,当該期間に含まれるすべての日数を指すものと解するのが相当である。
キャバクラやクラブのホステスの源泉徴収税額算出をめぐり,報酬から差し引く必要経費を考慮した基礎控除額は,実際に出勤した日数分か,出勤日以外も含めた報酬計算期間の全日数分かが争われた訴訟で最高裁は全日数分を控除できるとの初判断を示し,「実際の出勤日数分しか控除できない」と主張した国税当局勝訴の原審判決を破棄し,審理を東京高裁に差し戻した。
最判平22・3・2(原文PDF)
一般に,「期間」とは,ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった,時的連続性を持った概念であると解されているから,所得税法施行令322条(以下,施行令と略す。)にいう「当該支払金額の計算期間」も,当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然であり,これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない。
…租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく,原審のような解釈を採ることは,上記のとおり,文言上困難であるのみならず,ホステス報酬に係る源泉徴収制度において基礎控除方式が採られた趣旨は,できる限り源泉所得税額に係る還付の手数を省くことにあったことが,立法担当者の説明等からうかがわれるところであり,この点からみても,原審のような解釈は採用し難い。
そうすると,ホステス報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合においては,施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は,ホステスの実際の稼働日数ではなく,当該期間に含まれるすべての日数を指すものと解するのが相当である。
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2010年02月26日
天皇の公的行為について
●「政府、天皇の公的行為で「統一的ルール設けない」 自共は反発」:イザ!
公的行為のあり方に関する政府見解
1. いわゆる天皇の公的行為とは,憲法に定める国事行為以外の行為で,天皇が象徴としての地位に基づいて,公的な立場で行われるものをいう。天皇の公的行為については,憲法上明文の根拠はないが,象徴たる地位にある天皇の行為として当然認められるところである。
2. 天皇の公的行為は,国事行為ではないため,憲法にいう内閣の助言と承認は必要ではないが,憲法第4条は,天皇は「国政に関する権能を有しない」と規定しており,内閣は,天皇の公的行為が憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮すべき責任を負っている。
3. 天皇の公的行為には,外国賓客の接遇のほか,外国ご訪問,国会開会式にご臨席になりおことばを述べること,新年一般参賀へのお出まし,全国植樹祭や国民体育大会へのご臨席など,様々なものがあり,それぞれの公的行為の性格に応じた適切な対応が必要となることから,統一的なルールを設けることは、現実的ではない。
4. したがって,天皇の公的行為については,各行事等の趣旨・内容のほか,天皇陛下がご臨席等をすることの意義や国民の期待など,様々な事情を勘案し,判断していくべきものと考える。
5. いずれにせよ,内閣は,天皇の公的行為が憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮すべき責任を負っており,今後とも適切に対応してまいりたい。
2.が重要ですね。天皇の意思が働く余地が大きいし,内容が何を言っているか抽象的すぎる。あと,公的行為は象徴たる地位から認められるのが確認されています。政治利用防止のルールは公的行為の内容が多岐にわたるからこれから積み重ねによって外延を明らかにするほかないと思います。問題があれば国会で追及すればよいのです。現状で野党はやる気ないのかやれないのか権力監視の機能を果たしていないので危惧を示すのは理解できます。政府に文句をいうだけで対案を出してから議論すればよいにできないのでしょうか。
ついでに憲法第9条の趣旨についての政府見解もあります。要点だけとりだすと,9条1項限定放棄説とり,2項全面放棄説を採用します。特徴的なのは,自衛のための必要最小限度の自衛力は「戦力」あたらないというところにあります。
公的行為のあり方に関する政府見解
1. いわゆる天皇の公的行為とは,憲法に定める国事行為以外の行為で,天皇が象徴としての地位に基づいて,公的な立場で行われるものをいう。天皇の公的行為については,憲法上明文の根拠はないが,象徴たる地位にある天皇の行為として当然認められるところである。
2. 天皇の公的行為は,国事行為ではないため,憲法にいう内閣の助言と承認は必要ではないが,憲法第4条は,天皇は「国政に関する権能を有しない」と規定しており,内閣は,天皇の公的行為が憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮すべき責任を負っている。
3. 天皇の公的行為には,外国賓客の接遇のほか,外国ご訪問,国会開会式にご臨席になりおことばを述べること,新年一般参賀へのお出まし,全国植樹祭や国民体育大会へのご臨席など,様々なものがあり,それぞれの公的行為の性格に応じた適切な対応が必要となることから,統一的なルールを設けることは、現実的ではない。
4. したがって,天皇の公的行為については,各行事等の趣旨・内容のほか,天皇陛下がご臨席等をすることの意義や国民の期待など,様々な事情を勘案し,判断していくべきものと考える。
5. いずれにせよ,内閣は,天皇の公的行為が憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮すべき責任を負っており,今後とも適切に対応してまいりたい。
2.が重要ですね。天皇の意思が働く余地が大きいし,内容が何を言っているか抽象的すぎる。あと,公的行為は象徴たる地位から認められるのが確認されています。政治利用防止のルールは公的行為の内容が多岐にわたるからこれから積み重ねによって外延を明らかにするほかないと思います。問題があれば国会で追及すればよいのです。現状で野党はやる気ないのかやれないのか権力監視の機能を果たしていないので危惧を示すのは理解できます。政府に文句をいうだけで対案を出してから議論すればよいにできないのでしょうか。
ついでに憲法第9条の趣旨についての政府見解もあります。要点だけとりだすと,9条1項限定放棄説とり,2項全面放棄説を採用します。特徴的なのは,自衛のための必要最小限度の自衛力は「戦力」あたらないというところにあります。
タグ:公的行為
2010年01月27日
最近の判例
なんかいろいろ裁判があったのでネタ無いわけではないけど取り上げます。
●マンション非居住者限定の「住民活動協力金」は有効 最高裁:イザ!
大阪市北区にある分譲マンションの管理組合が,マンションに住んでいない所有者(不在組合員)にだけ,管理組合の運営を負担するための「協力金」の支払いを求めることができるかどうか争われた3件の訴訟の上告審判決で「金銭的負担を求めることは合理性を欠かない」とし徴収は有効とした。
最判平22・1・26(原文PDF)
マンション管理組合の総会決議により行われた自ら専有部分に居住しない組合員が組合費に加えて住民活動協力金を負担すべきものとする旨の規約の変更が,建物の区分所有等に関する法律31条1項後段所定の場合に当たらないとされた事例
●入院患者の身体拘束 病院の措置は「合法」 患者側逆転敗訴 最高裁判決:イザ!
愛知県一宮市の「一宮西病院」に入院した女性が不必要な身体拘束で心身に苦痛を受けたとし,女性の遺族が病院を経営する社会医療法人に損害賠償を求めた訴訟で「女性が重大な傷害を負う危険を避けるため,緊急的にやむを得ず行ったもので,違法」でないして原告敗訴が確定した。患者に対する身体拘束の違法性が争われた訴訟で、最高裁の初めての判断です。
最判平22・1・26(原文PDF)
当直の看護師らが抑制具であるミトンを用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為法上違法ともいえないとされた事例
●マンション非居住者限定の「住民活動協力金」は有効 最高裁:イザ!
大阪市北区にある分譲マンションの管理組合が,マンションに住んでいない所有者(不在組合員)にだけ,管理組合の運営を負担するための「協力金」の支払いを求めることができるかどうか争われた3件の訴訟の上告審判決で「金銭的負担を求めることは合理性を欠かない」とし徴収は有効とした。
最判平22・1・26(原文PDF)
マンション管理組合の総会決議により行われた自ら専有部分に居住しない組合員が組合費に加えて住民活動協力金を負担すべきものとする旨の規約の変更が,建物の区分所有等に関する法律31条1項後段所定の場合に当たらないとされた事例
●入院患者の身体拘束 病院の措置は「合法」 患者側逆転敗訴 最高裁判決:イザ!
愛知県一宮市の「一宮西病院」に入院した女性が不必要な身体拘束で心身に苦痛を受けたとし,女性の遺族が病院を経営する社会医療法人に損害賠償を求めた訴訟で「女性が重大な傷害を負う危険を避けるため,緊急的にやむを得ず行ったもので,違法」でないして原告敗訴が確定した。患者に対する身体拘束の違法性が争われた訴訟で、最高裁の初めての判断です。
最判平22・1・26(原文PDF)
当直の看護師らが抑制具であるミトンを用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為法上違法ともいえないとされた事例
タグ:判例
2010年01月23日
事務管理の判例
最判平21・1・19(原文PDF)
所得税は,個人の収入金額から必要経費及び所定の控除額を控除して算出される所得金額を課税標準として,個人の所得に対して課される税であり,納税義務者は当該個人である。本来他人に帰属すべき収入を自己の収入として所得金額を計算したため税額を過大に申告した場合であっても,それにより当該他人が過大に申告された分の所得税の納税義務を負うわけではなく,申告をした者が申告に係る所得税額全額について納税義務を負うことになる。また,過大な申告をした者が申告に係る所得税を全額納付したとしても,これによって当該他人が本来負うべき納税義務が消滅するものではない。
したがって,共有者の1人が共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として不動産所得の金額を計算し,納付すべき所得税の額を過大に申告してこれを納付したとしても,過大に納付した分を含め,所得税の申告納付は自己の事務であるから,他人のために事務を管理したということはできず,事務管理は成立しないと解すべきである。このことは,市県民税についても同様である。
--------------------------------------------
パトラッシュ,疲れたろう。僕も疲れたんだ。
sent from willcom03
所得税は,個人の収入金額から必要経費及び所定の控除額を控除して算出される所得金額を課税標準として,個人の所得に対して課される税であり,納税義務者は当該個人である。本来他人に帰属すべき収入を自己の収入として所得金額を計算したため税額を過大に申告した場合であっても,それにより当該他人が過大に申告された分の所得税の納税義務を負うわけではなく,申告をした者が申告に係る所得税額全額について納税義務を負うことになる。また,過大な申告をした者が申告に係る所得税を全額納付したとしても,これによって当該他人が本来負うべき納税義務が消滅するものではない。
したがって,共有者の1人が共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として不動産所得の金額を計算し,納付すべき所得税の額を過大に申告してこれを納付したとしても,過大に納付した分を含め,所得税の申告納付は自己の事務であるから,他人のために事務を管理したということはできず,事務管理は成立しないと解すべきである。このことは,市県民税についても同様である。
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パトラッシュ,疲れたろう。僕も疲れたんだ。
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2010年01月20日
砂川市有地を神社敷地に提供したのは違憲
●「公有地に神社は「違憲」 北海道砂川市の政教分離訴訟、最高裁大法廷」:イザ!
北海道砂川市が市有地を神社に無償で使わせているのは憲法が定める政教分離に違反するなどとして市長を相手取り、(1)市有地を空知太(そらちぶと)神社の敷地として無償で使わせている,(2)富平神社の敷地になっていた市有地を地元町内会に無償譲渡した,と違法確認を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は(1)について違憲,(2)については合憲と判断した。政教分離訴訟で最高裁が違憲判断を示したのは愛媛玉ぐし料訴訟(最大判平9・4・2)以来で2例目である。
(1)最大判平21・1・20(原文pdf)
1 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反するとされた事例
2 上記の違憲状態を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて審理判断せず,釈明権を行使することもないまま,市長が神社施設の撤去及び土地明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(2)最大判平21・1・20(原文pdf)
市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を同町内会に譲与したことが憲法20条3項,89条に違反しないとされた事例
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北海道砂川市が市有地を神社に無償で使わせているのは憲法が定める政教分離に違反するなどとして市長を相手取り、(1)市有地を空知太(そらちぶと)神社の敷地として無償で使わせている,(2)富平神社の敷地になっていた市有地を地元町内会に無償譲渡した,と違法確認を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は(1)について違憲,(2)については合憲と判断した。政教分離訴訟で最高裁が違憲判断を示したのは愛媛玉ぐし料訴訟(最大判平9・4・2)以来で2例目である。
(1)最大判平21・1・20(原文pdf)
1 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反するとされた事例
2 上記の違憲状態を解消するための他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて審理判断せず,釈明権を行使することもないまま,市長が神社施設の撤去及び土地明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(2)最大判平21・1・20(原文pdf)
市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を同町内会に譲与したことが憲法20条3項,89条に違反しないとされた事例
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2009年12月21日
最近の判例
最決平21・12・09
刑訴法96条3項は,保釈された者について,禁錮以上の実刑判決が確定した後,逃亡等の所定の事由が生じた場合には,検察官の請求により,保証金の全部又は一部を没取しなければならない旨規定しているが,この規定は,保釈保証金没取の制裁の予告の下,これによって逃亡等を防止するとともに,保釈された者が逃亡等をした場合には,上記制裁を科することにより,刑の確実な執行を担保する趣旨のものである。このような制度の趣旨にかんがみると,保釈された者について,同項所定の事由が認められる場合には,刑事施設に収容され刑の執行が開始された後であっても,保釈保証金を没取することができる
最判平21・12・17
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091217164603.pdf
政務調査費の使途を問題とする住民監査請求に係る監査に際し,監査委員が区議会における会派から任意に提出を受けた文書に記録された政務調査活動の目的,性格,内容等に係る情報が,品川区情報公開・個人情報保護条例(平成9年品川区条例第25号)8条6号ア所定の非公開情報に当たるとされた事例
最判平21・12・18
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091218115254.pdf
株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
最判平21・12・18
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091218112928.pdf
遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合における,受遺者の提起した弁償すべき額の確定を求める訴えと確認の利益
刑訴法96条3項は,保釈された者について,禁錮以上の実刑判決が確定した後,逃亡等の所定の事由が生じた場合には,検察官の請求により,保証金の全部又は一部を没取しなければならない旨規定しているが,この規定は,保釈保証金没取の制裁の予告の下,これによって逃亡等を防止するとともに,保釈された者が逃亡等をした場合には,上記制裁を科することにより,刑の確実な執行を担保する趣旨のものである。このような制度の趣旨にかんがみると,保釈された者について,同項所定の事由が認められる場合には,刑事施設に収容され刑の執行が開始された後であっても,保釈保証金を没取することができる
最判平21・12・17
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091217164603.pdf
政務調査費の使途を問題とする住民監査請求に係る監査に際し,監査委員が区議会における会派から任意に提出を受けた文書に記録された政務調査活動の目的,性格,内容等に係る情報が,品川区情報公開・個人情報保護条例(平成9年品川区条例第25号)8条6号ア所定の非公開情報に当たるとされた事例
最判平21・12・18
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091218115254.pdf
株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
最判平21・12・18
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091218112928.pdf
遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合における,受遺者の提起した弁償すべき額の確定を求める訴えと確認の利益
タグ:判例
2009年12月19日
タヌキの森が守られた。
●完成間近のマンションの建築確認を取り消し 最高裁で確定:イザ!
東京都新宿区内のマンション建設に反対する周辺住民が,区の建築確認を取り消すように求めた訴訟の上告審判決で,最高裁区側の上告を棄却しました。違法建築が確定したため,区や業者は対応を迫られることになる。適法にするために,外の道路に通じる空き地の幅を広げたり,建物の面積を圧縮したりすることも考えられるそうです。
最判平21・12・17
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091217152948.pdf
東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために同条1項所定の接道義務の違反があると主張することは,安全認定が取り消されていなくても,許される。
(1)東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号。以下「本件条例」という。)4条1項は,大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより,避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり,これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は,同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について,同項を適用しないこととし,建築主に対し,建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。
平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では,同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は,建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが,この改正により,建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。これは,平成10年法律第100号により建築基準法が改正され,建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったこと(建築基準法6条の2,7条の2,7条の4,77条の18以下参照)に伴う措置であり,上記のとおり判断機関が分離されたのは,接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり,建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが,安全上の支障の有無は,専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり,知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。
以上のとおり,建築確認における接道要件充足の有無の判断と,安全認定における安全上の支障の有無の判断は,異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが,もともとは一体的に行われていたものであり,避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして,前記のとおり,安全認定は,建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり,建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。
(2)他方,安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し,建築確認については,工事の施工者は,法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても,その者において,安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく,建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて,その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。
(3)以上の事情を考慮すると,安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,安全認定が取り消されていなくても,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許される
東京都新宿区内のマンション建設に反対する周辺住民が,区の建築確認を取り消すように求めた訴訟の上告審判決で,最高裁区側の上告を棄却しました。違法建築が確定したため,区や業者は対応を迫られることになる。適法にするために,外の道路に通じる空き地の幅を広げたり,建物の面積を圧縮したりすることも考えられるそうです。
最判平21・12・17
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091217152948.pdf
東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために同条1項所定の接道義務の違反があると主張することは,安全認定が取り消されていなくても,許される。
(1)東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号。以下「本件条例」という。)4条1項は,大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより,避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり,これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は,同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について,同項を適用しないこととし,建築主に対し,建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。
平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では,同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は,建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが,この改正により,建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。これは,平成10年法律第100号により建築基準法が改正され,建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったこと(建築基準法6条の2,7条の2,7条の4,77条の18以下参照)に伴う措置であり,上記のとおり判断機関が分離されたのは,接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり,建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが,安全上の支障の有無は,専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり,知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。
以上のとおり,建築確認における接道要件充足の有無の判断と,安全認定における安全上の支障の有無の判断は,異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが,もともとは一体的に行われていたものであり,避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして,前記のとおり,安全認定は,建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり,建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。
(2)他方,安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し,建築確認については,工事の施工者は,法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても,その者において,安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく,建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて,その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。
(3)以上の事情を考慮すると,安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,安全認定が取り消されていなくても,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許される
2009年12月11日
教育内容の変更は違法でない場合
●「論語教育」廃止訴訟 保護者側の逆転敗訴確定 最高裁
「論語」を基本にした独自の道徳教育を一方的に廃止したのは不当として,私立江戸川学園取手中・高校の生徒の保護者らが学校側に損害賠償などを求めた訴訟で,最高裁判所は,学校を運営する「江戸川学園」(東京)に賠償を命じた2審東京高裁判決を破棄し保護者側の控訴を棄却したそうです。
最判平21・12・10
学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成する場合
(学校選択自由の侵害について)
親は,子の将来に対して最も深い関心を持ち,かつ,配慮をすべき立場にある者として,子の教育に対する一定の支配権,すなわち子の教育の自由を有すると認められ,このような親の教育の自由は,主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられる(最大判昭51・5・21)。そして,親の学校選択の自由については,その性質上,特定の学校の選択を強要されたり,これを妨害されたりするなど,学校を選択する際にその侵害が問題となり得るものであって,親が子を入学させる学校を選択する際に考慮した当該学校の教育内容や指導方法(以下,両者を併せて「教育内容等」という。)が子の入学後に変更されたとしても,学校が教育内容等の変更を予定しながら,生徒募集の際にそのことを秘して従来どおりの教育を行う旨説明,宣伝したなどの特段の事情がない限り,親の学校選択の自由が侵害されたものということはできない。本件において,上記特段の事情についての主張立証はなく,上告人が,生徒募集の際に説明,宣伝した教育内容等を被上告人らの子の入学後に変更し,その結果学内に混乱が生じたからといって,被上告人らの学校選択の自由が侵害されたものとは認められない。
(教育内容変更の不法行為の成否)
親が,学校が生徒募集の際に行った教育内容等についての説明,宣伝により,子にその説明,宣伝どおりの教育が施されるとの期待,信頼を抱いて子を当該学校に入学させたにもかかわらず,その後学校がその教育内容等を変更し,説明,宣伝どおりの教育が実施されなくなった結果,親の上記期待,信頼が損なわれた場合において,上記期待,信頼は,およそ法律上保護される利益に当たらないとして直ちに不法行為の成立を否定することは,子に対しいかなる教育を受けさせるかは親にとって重大な関心事であることや上記期待,信頼の形成が学校側の行為に直接起因することからすると,相当ではない。
他方,上記期待,信頼は,私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものではない。生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容等の受け止め方やどこに重きを置くのかは,個々の親によって様々であり,すべての親が常に同じ期待,信頼を抱くものではないし,同様の期待,信頼を抱いた親であっても,ある教育内容等が変更されたことにより,その期待,信頼が損なわれたと感じるか否かは,必ずしも一様とはいえない。そうすると,特定の親が,子の入学後の教育内容等の変更により,自己の抱いていた期待,信頼が損なわれたと感じたからといって,それだけで直ちに上記変更が当該親に対する不法行為を構成するものということはできない。
また,学校教育における教育内容等の決定は,当該学校の教育理念,生徒の実情,物的設備・施設の設置状況,教師・職員の配置状況,財政事情等の各学校固有の事情のほか,学校教育に関する諸法令や学習指導要領との適合性,社会情勢等,諸般の事情に照らし,全体としての教育的効果や特定の教育内容等の実施の可能性,相当性,必要性等を総合考慮して行われるものであって,上記決定は,学校教育に関する諸法令や学習指導要領の下において,教育専門家であり当該学校の事情にも精通する学校設置者や教師の裁量にゆだねられるべきものと考えられる。そして,教育内容等については,上記諸般の事情の変化をも踏まえ,その教育的効果等の評価,検討が不断に行われるべきであり,従前の教育内容等に対する評価の変化に応じてこれを変更することについても,学校設置者や教師に裁量が認められるべきものと考えられる。
したがって,学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容等の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,当該学校において生徒が受ける教育全体の中での当該教育内容等の位置付け,当該変更の程度,当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,当該変更が,学校設置者や教師に上記のような裁量が認められることを考慮してもなお,社会通念上是認することができないものと認められる場合に限られるというべきである。
選択的併合において上訴していない部分について審判するかについては最判昭58・4・14を引用して肯定している。
「論語」を基本にした独自の道徳教育を一方的に廃止したのは不当として,私立江戸川学園取手中・高校の生徒の保護者らが学校側に損害賠償などを求めた訴訟で,最高裁判所は,学校を運営する「江戸川学園」(東京)に賠償を命じた2審東京高裁判決を破棄し保護者側の控訴を棄却したそうです。
最判平21・12・10
学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成する場合
(学校選択自由の侵害について)
親は,子の将来に対して最も深い関心を持ち,かつ,配慮をすべき立場にある者として,子の教育に対する一定の支配権,すなわち子の教育の自由を有すると認められ,このような親の教育の自由は,主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられる(最大判昭51・5・21)。そして,親の学校選択の自由については,その性質上,特定の学校の選択を強要されたり,これを妨害されたりするなど,学校を選択する際にその侵害が問題となり得るものであって,親が子を入学させる学校を選択する際に考慮した当該学校の教育内容や指導方法(以下,両者を併せて「教育内容等」という。)が子の入学後に変更されたとしても,学校が教育内容等の変更を予定しながら,生徒募集の際にそのことを秘して従来どおりの教育を行う旨説明,宣伝したなどの特段の事情がない限り,親の学校選択の自由が侵害されたものということはできない。本件において,上記特段の事情についての主張立証はなく,上告人が,生徒募集の際に説明,宣伝した教育内容等を被上告人らの子の入学後に変更し,その結果学内に混乱が生じたからといって,被上告人らの学校選択の自由が侵害されたものとは認められない。
(教育内容変更の不法行為の成否)
親が,学校が生徒募集の際に行った教育内容等についての説明,宣伝により,子にその説明,宣伝どおりの教育が施されるとの期待,信頼を抱いて子を当該学校に入学させたにもかかわらず,その後学校がその教育内容等を変更し,説明,宣伝どおりの教育が実施されなくなった結果,親の上記期待,信頼が損なわれた場合において,上記期待,信頼は,およそ法律上保護される利益に当たらないとして直ちに不法行為の成立を否定することは,子に対しいかなる教育を受けさせるかは親にとって重大な関心事であることや上記期待,信頼の形成が学校側の行為に直接起因することからすると,相当ではない。
他方,上記期待,信頼は,私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものではない。生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容等の受け止め方やどこに重きを置くのかは,個々の親によって様々であり,すべての親が常に同じ期待,信頼を抱くものではないし,同様の期待,信頼を抱いた親であっても,ある教育内容等が変更されたことにより,その期待,信頼が損なわれたと感じるか否かは,必ずしも一様とはいえない。そうすると,特定の親が,子の入学後の教育内容等の変更により,自己の抱いていた期待,信頼が損なわれたと感じたからといって,それだけで直ちに上記変更が当該親に対する不法行為を構成するものということはできない。
また,学校教育における教育内容等の決定は,当該学校の教育理念,生徒の実情,物的設備・施設の設置状況,教師・職員の配置状況,財政事情等の各学校固有の事情のほか,学校教育に関する諸法令や学習指導要領との適合性,社会情勢等,諸般の事情に照らし,全体としての教育的効果や特定の教育内容等の実施の可能性,相当性,必要性等を総合考慮して行われるものであって,上記決定は,学校教育に関する諸法令や学習指導要領の下において,教育専門家であり当該学校の事情にも精通する学校設置者や教師の裁量にゆだねられるべきものと考えられる。そして,教育内容等については,上記諸般の事情の変化をも踏まえ,その教育的効果等の評価,検討が不断に行われるべきであり,従前の教育内容等に対する評価の変化に応じてこれを変更することについても,学校設置者や教師に裁量が認められるべきものと考えられる。
したがって,学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容等の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,当該学校において生徒が受ける教育全体の中での当該教育内容等の位置付け,当該変更の程度,当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,当該変更が,学校設置者や教師に上記のような裁量が認められることを考慮してもなお,社会通念上是認することができないものと認められる場合に限られるというべきである。
選択的併合において上訴していない部分について審判するかについては最判昭58・4・14を引用して肯定している。
タグ:判例 「論語教育」廃止訴訟
2009年12月10日
川崎筋弛緩剤投与事件の判例
なんかmmさんのブログがまた更新されてました。一時的に,急に止まったので何だろうなと持っていたのですが忙しかったようです。
ところで,
●川崎筋弛緩剤投与事件、「終末医療めぐり」医師の有罪確定へ
平成10年に川崎協同病院で意識が回復しない男性患者の気管内チューブを抜き,筋弛緩剤を投与して死なせたとして,殺人罪に問われた須田セツ子被告の上告審で須田被告側の上告を棄却する決定をし,懲役1年6月,執行猶予3年とした東京高裁判決が確定することになります。
最決平21・12・07
医師である被告人が,気管支ぜん息の重積発作により入院しこん睡状態にあった被害者から,気道確保のため挿入されていた気管内チューブを抜管する行為は,被害者の回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況になく,また,回復をあきらめた家族からの気管内チューブ抜管の要請も被害者の病状等について適切な情報を伝えられた上でされたものではないなどの事情の下では,法律上許容される治療中止には当たらないとされた事例
ところで,
●川崎筋弛緩剤投与事件、「終末医療めぐり」医師の有罪確定へ
平成10年に川崎協同病院で意識が回復しない男性患者の気管内チューブを抜き,筋弛緩剤を投与して死なせたとして,殺人罪に問われた須田セツ子被告の上告審で須田被告側の上告を棄却する決定をし,懲役1年6月,執行猶予3年とした東京高裁判決が確定することになります。
最決平21・12・07
医師である被告人が,気管支ぜん息の重積発作により入院しこん睡状態にあった被害者から,気道確保のため挿入されていた気管内チューブを抜管する行為は,被害者の回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況になく,また,回復をあきらめた家族からの気管内チューブ抜管の要請も被害者の病状等について適切な情報を伝えられた上でされたものではないなどの事情の下では,法律上許容される治療中止には当たらないとされた事例
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